「指先に爪の角が当たって痛い」
「指の痛いところが黄色い…もしかして化膿してる?」
巻き爪で皮膚が傷ついて化膿すると、少し物にぶつけただけで大変な痛みを伴います。特に夏場など患部が蒸れやすい時期に、ご経験されている方もいらっしゃるでしょう。
膿が溜まると気になって絞り出したくなるかもしれませんが、これは正しい対処方法なのでしょうか?
今回は巻き爪の化膿の「自分でできる応急処置」や「専門機関の治療方法」などを詳しく解説していきます。日常的にできる巻き爪の化膿対策もご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
巻き爪が化膿する原因とは
爪は皮膚の一部です。足の小さな面積だけで体を支えたり、指先に力を込めやすくしたりするために大変重要な役割を果たしています。
ところが力の加わり方によって爪が内側方向に巻いてしまい、日常生活に悪影響を及ぼしてしまうことがあります。この症状が巻き爪です。
巻き爪は指の側面から内側に向かって爪が食い込んでいる状態なので、爪によって皮膚が大変傷つきやすくなっています。
もし皮膚の傷ついた部分にブドウ球などの細菌が付着すると、私たちの体では細菌を追い出すために白血球などが戦うことによって炎症が起きます。そして細菌と戦った白血球の死骸などが、膿となるのです。
このように巻き爪の周りが化膿している状態のことを「爪周囲炎」といいます。
巻き爪が化膿する原因は陥入爪の場合もある
巻き爪とよく混同されがちですが、同じ化膿している状態でも爪の側面の先端部分の皮膚が盛り上がっている状態の場合は陥入爪が原因といえます。また皮膚が盛り上がっている部分を「肉芽」といいます。
陥入爪は、爪が伸びる過程で皮膚に爪が刺さって炎症が起こっています。痛みを取るために爪を短く切ってしまうとまた同じ箇所に爪が刺さることになるので、炎症・化膿を繰り返すリスクが高いです。
また人によっては巻き爪と陥入爪を併発している場合もあり、この場合も「肉芽」が形成されます。
自分で判断するのは難しいことも多いので、「炎症が治まらない」「化膿を繰り返す」というときは専門家に相談するようにしましょう。
巻き爪の化膿を放置するとどうなる?
膿は「体から細菌を排除するために戦った白血球などの死骸」とご説明しました。白血球などはもともと体にあるものですが、化膿を放置しておくのはよくありません。
化膿を放置しておくと、以下のようなリスクが考えられます。
- 炎症が再発する
- 傷みや炎症が強くなる
- 見えないところに感染が広がる
- 化膿性肉芽腫ができてしまう
見える傷口が小さいからといって、症状も軽いとは限らないです。化膿を放置して悪化させると、細菌が血液にのって全身に運ばれて感染が広がる可能性もあります。
さらに化膿性肉芽腫ができてしまうと、激痛で爪先をついたり足先に力を入れたりするのが困難です。そのためかかとで歩くような不自然な歩行方法をしなくてはならず、腰痛などの原因になります。
巻き爪が膿んだらどうする?応急処置方法
巻き爪が化膿したら、自力で完治させることは難しいです。本来なら皮膚科などの専門機関に相談することが望ましいですが、仕事などの事情ですぐには行動できない人もいらっしゃるでしょう。
そのようなときに自分でできる2つの応急処置方法をご紹介します。皮膚への爪の食い込みが緩和されるので、痛みをかなり減らせるはずです。
- コットンパッキング法
- テーピング法
ただしこれらの方法はあくまで応急処置方法なので、完治を目指すものではありません。巻き爪の化膿の痛みから解放されるためには、一日も早く専門機関に相談してください。
応急処置①コットンパッキング法
コットンパッキング法とは「コットンやガーゼを利用する応急処置方法」で、比較的簡単にできる方法です。
【準備する物】
- コットンやガーゼ
【コットンパッキング法のやり方】
- コットンを米粒サイズに丸める
- 化膿している皮膚と爪の間にコットンをはさみ込む
コットンの丸め方が緩かったり薄すぎたりすると、効果が少ないので注意が必要です。もしコットンをはさんで痛みが強い場合は、次のテーピング法を試してみてください。
応急処置②テーピング法
テーピング法は、「テープや絆創膏を使用する方法」です。テープなどの長さや幅を調節する手間がありますが、爪と皮膚の間にコットンなどをはさまないので少ない痛みで応急処置することができます。
【準備する物】
- ドラッグストアなどで売っているテープや絆創膏
【テーピング法のやり方】
- テープを幅2.5cm×長さ6cmくらいに切る
- 爪が食い込んでいる部分の皮膚にテープを貼る
- 皮膚を外側に引っ張り、爪との隙間を広げる
- そのまま引っ張りながら指の周りを一周させ、固定する
テーピング法はテープの引っ張る力で、爪と皮膚の間に隙間を開けて痛みを緩和します。テープを貼るときに引っ張る力を緩めないように気をつけながら、しっかり固定しましょう。
巻き爪の膿を応急処置するときの注意点
巻き爪の膿は、応急処置をすれば痛みを緩和することが可能です。ここでは応急処置の効果をより高めるために、注意していただきたいことを2つお伝えします。
- 膿を無理に出すのは絶対NG!
- 市販の(塗り薬or飲み薬)薬を使うのもアリ
膿を無理に出すのは絶対NG!
巻き爪の化膿が進むと、傷口から膿が出てくる場合もあります。また膿が出てくると、つい気になって絞り出してしまいたくなりますよね。しかし膿を無理に出すのは、絶対にNGです。
傷口を触って無理に膿を絞り出すと、余計に炎症が進んでしまったり腫れがひどくなったりしてしまうことがあります。
「膿の放置はダメ」
「絞り出すのもダメ」
ではどうしたらいいのでしょう?
正解は「清潔なティッシュやガーゼを当てながら、抑える程度に膿を除去する」です。患部を強くひっかいたり絞ったりするのは、炎症の悪化に繋がるので絶対にやめましょう。
また膿を除去した後は、傷口を水で洗い流して清潔な布で拭いてからガーゼなどで保護してください。巻き爪は、清潔が第一です。汗をかいたりした後も、水洗いやガーゼの貼り直しなどで清潔を保つようにしましょう。
市販の(塗り薬or飲み薬)薬を使うのもアリ
巻き爪が化膿しているときは、市販されている塗り薬を利用するのも有効です。
今のところ化膿止めになる内服薬は、市販されていません。「ロキソニンやイブは効かないの?」と思われるかもしれませんが、これらは化膿止めではなく痛み止めです。巻き爪の痛みを緩和したいという場合には効果を発揮しますので、ぜひご利用ください。
それでは、巻き爪の化膿止めに使用できる塗り薬をご紹介しましょう。
- ゼリア新薬「ドルマイシン軟膏」
- ゼリア新薬「ドルマイコーチ軟膏」
- アリナミン製薬「テラマイシン軟膏」
- 田辺三菱製薬「フルコートf」
少し意外かもしれませんが「オロナイン軟膏」は、巻き爪の化膿に有効ではありません。というのもオロナイン軟膏は殺菌効果はあっても、化膿止めの役割を果たす抗生物質が含まれていないからです。軽い切り傷などの「化膿を防ぐ」ことは可能です。しかしすでに膿んでいる箇所の化膿を止めることはできませんので、ご注意ください。
治療院・病院へ行った方が良いケース
巻き爪が化膿しているときに応急処置を用いれば、痛みを緩和することができます。しかし自分で応急処置をするよりも、真っ先に治療院や病院などの専門機関に頼ったほうがいいケースもあります。
【治療院・病院へ行った方が良いケース】
- コットンパッキングやテーピングなど、応急処置方法が正しくできない
- コットンを爪と皮膚の間に入れようとすると痛い
- 炎症や化膿を繰り返している
- 肉芽や爪の周囲の腫れが重症化している
- 痛みで歩行に支障が出ている
巻き爪の完治は早期治療がポイントです。巻き爪の化膿が重症化してしまうと、爪そのものを除去しなくてはならないこともあります。このようなケースに当てはまっていなくても、なるべく早く専門機関に相談しましょう。
医療機関での治療方法について
巻き爪の治療が受けられるのは、皮膚科や形成外科、フットケア外来で受けられます。また医療機関ではありませんが、一部のネイルサロンや巻き爪専門院でも受けることが可能です。
巻き爪の治療には「保存的治療」と「外科的治療」の2種類があり、よほど重度ではない限り保存的治療で治せます。また保存治療は、基本的に保険適用になりません。
方法①保存的治療
保存的治療は「手術を行わない治療方法」のことです。治療方法には以下のようなものがあります。
- クリップを使う方法
- ワイヤーを使う方法
- プレートを使う方法
- ガタ―法
クリップやワイヤー、プレートを使う方法は、変形した爪を正しい形に戻す矯正治療です。矯正器具は市販されている物もあるので、軽度の巻き爪なら自分で治すこともできます。
ガタ―法は麻酔をして爪と皮膚の間にチューブをさし込み、チューブで爪の食い込みを防ぐ方法です。爪の食い込みから皮膚を守れるので、施術してすぐ痛みを和らげることができます。
方法②外科的治療
外科的治療とは、「手術によって爪を部分的に切除する治療方法」です。基本的に巻き爪の治療は、外科的治療より保存的治療が優先されます。しかし保存的治療で改善の見込みがない場合は、外科的治療でより確実に原因を取り除いていきます。
- フェノール方法
- NaOH法
- メスなどで爪床や爪母を切除する方法
巻き爪の外科的治療は、施術を行った当日から歩行可能です。ただし運動や入浴など、日常生活が制限される場合もあります。
巻き爪を繰り返さないために日常生活でできること(自分でできる巻き爪の化膿対策)
巻き爪の化膿を防ぐためには、爪が皮膚に食い込む状態を繰り返さないことが大切です。
【自分でできる巻き爪の化膿対策】
- 爪を短く切り過ぎない
- 足に負担のかかる靴は避ける
病院で治療を受けるだけでなく日常的に自分で対策を行うことによって、巻き爪の化膿を防止しましょう。
爪を短く切り過ぎない
巻き爪は爪の切り方が大きな原因になります。爪の正しい切り方は「スクエアオフカット」です。爪の長さは指先あたりを基準に、深爪や爪の角を短く切るのを防ぎましょう。
【準備する物】
- 爪切り(直線刃が望ましい)
- 爪やすり
【正しい爪の切りの手順】
- 指先と同じくらいの長さで爪の上部を少しずつ切って直線状にする
- 指先のカーブに合わせて、爪の角を爪やすりで軽く削る
- 爪の上部を爪やすりで滑らかに整える
爪の伸びる速度は人によって少し異なりますが、だいたい1ヶ月がお手入れの目安です。
また爪を硬い状態で無理やり切ると、割れてしまいます。入浴後や蒸しタオルで温めるなど、爪を柔らかくしてから切るようにしましょう。
足に負担のかかる靴は避ける
足に負担がかかる靴を日常的に履き続けることも、巻き爪の原因になります。
- 硬い革靴
- ハイヒール
- 爪先が細い靴
このような靴を履くと爪を圧迫して皮膚を傷つけやすくなるため、避けるようにしましょう。
またすでに痛みがある場合は、つま先に余裕のある靴紐タイプの靴を選んでください。靴紐をしっかり締めることで、足が動いて靴に当たるのを防げます。
さらに親指の内側に炎症があるときは、親指と人差し指の間にガーゼを挟み込んでみましょう。指同士が当たるのを避けられ、ガーゼがクッションになって痛みを和らげることが出るはずです。
まとめ
巻き爪の化膿についてご説明してまいりましたが、いかがでしたでしょうか?
巻き爪の化膿した部分の応急処置は、痛みを和らげたり化膿の進行を緩めたりするのに有効です。しかし巻き爪を完全に治せるわけではありません。
症状が悪化する前に一日も早く専門機関に相談し、適切な治療を始めましょう。