陥入爪は、「爪の先の端の部分が皮膚に刺さった状態」です。激しい運動や靴などによって圧迫されると、爪がより深く刺さって患部が腫れたり化膿したりすることもあります。
陥入爪の腫れが悪化すると、痛みで歩くのもつらいです。また、幾度となく再発に悩まされている方も少なくないでしょう。
本記事では、陥入爪の治療方法を症状の段階別に詳しく解説していきます。最後まで読めば「陥入爪の治療法は?」「私の症状は自分で処置できる?」といった疑問が解消されるでしょう。
陥入爪の症状は3段階
陥入爪は爪の先端に強い力が加わって、爪の周りの皮膚に刺さる状態です。足の親指に発症することが多く、症状は3段階に分類されます。
- 軽症・・・疼痛、爪の周りの皮膚が赤くなったり少し腫れたりする
- 中等症・・・化膿や浮腫、肉芽が見られる、強い疼痛がある
- 重症・・・化膿を繰り返す、肉芽組織が爪の上に形成される、歩行困難なほど強い疼痛
陥入爪は、おもに以下のようなことが原因です。
- 間違った爪切り(深爪)
- 爪の過度な圧迫
- 浮き指
- 指のむくみ
- 爪水虫
- 抗がん剤の副作用
- 糖尿病の初期症状
- 寝たきり
- 体重の増加
- 外反母趾
- 遺伝
陥入爪は、放っておいて完治するケースは少なく、徐々に症状が進行していきます。症状別に有効な治療方法を知っておきましょう。
軽症の陥入爪の治し方:自分でできるケア
陥入爪の軽症の段階では、痛みが少ないこともあるため「治療しよう」とまで思わないかもしれません。
しかし悪化させないためには、初期段階で食い止めることが重要です。
軽症の陥入爪に有効な治療法は5つあります。
- 正しい爪切り
- 自分の足に合った靴
- テーピング
- コットンパッキング
- 市販の薬
いくつかの治療方法を組み合わせれば、より高い効果を期待できるでしょう。
正しい爪切り
陥入爪の大きな原因は、深爪です。つまり爪を切らずに正しく伸ばせば、陥入爪の症状を改善できます。
爪の正しい形はスクエアオフカットです。名前のとおり、爪を四角い形に整えます。
【正しい爪の切り方】
- 指先と同じくらいの長さに爪を切る
- 指先のカーブに合わせて爪の角を丸く整える
爪が短い間は無理に切らず、まずは指の先くらいまで伸ばすようにしましょう。
爪が伸びてくると、皮膚への食い込みが強くなり切ってしまいたくなるかもしれません。痛いときは、後ほどご説明する「テーピング」や「コットンパッキング」を一緒に試してみてください。
自分の足に合った靴
陥入爪の治療には、フットウェア選びも重要です。つま先の細い靴やストッキングなどは、つま先を圧迫して皮膚に爪を食い込ませる原因になります。
陥入爪を治すための自分の足に合った靴選びのポイントは4つです。
- つま先にゆとりがある
- 足指の上部にゆとりがある
- 足首や足の甲を靴紐などで固定できる
- ヒールが低い
靴は、同じサイズであってもメーカーやブランドによって形に個性があります。インターネット通販で購入せずに、実際に履き心地を試してから購入するようにしましょう。
テーピング
テーピングは、陥入爪の痛みを緩和できる方法です。テーピングで爪の脇の皮膚を押し下げ、爪と皮膚の間隔を広げることによって、爪が皮膚に刺さるのを防ぎます。
【準備する物】
伸縮性のある医療用テープ(2.5cm✕6cm)
【手順】
- 足を洗い、水気を除く
- 爪の刺さっている皮膚の端にテープを貼る
- 爪と皮膚の間を広げるようにテープを引っ張る
- テープを引っ張った状態を保ちながら、指の腹側にテープを回す
- テープを指の上側に回して、固定する
テープがなくても、絆創膏があれば代用可能です。絆創膏を使用するときは、両端を少し切り落とすと固定しやすくなります。
コットンパッキング
テーピングと同様に、コットンパッキングも爪と皮膚の間隔を開けて爪が皮膚に刺さるのを防ぎます。
【準備する物】
- コットン
- ピンセットやつまようじなど、爪と皮膚の間に挿し込みやすい物
【手順】
- コットンをちぎって米粒状に丸める
- コットンを患部の爪の下に挿し込む
コットンが落ちてきそうなときは、絆創膏やテーピングで固定しましょう。また、コットンは大きすぎるとかえって痛みを増す恐れがあるので、少量から試すようにしてください。
市販の薬
痛みを抑えるためには、市販の鎮痛剤が有効です。痛み止めには「ロキソプロフェン」や「イブプロフェン」が含まれている内服薬を選びましょう。
また化膿の応急処置には、抗生物質も有効です。抗生物質には、細菌を死滅させたり増殖を防いだりする効果があります。
抗生物質は市販で購入できるのは、外用薬のみです。「テラ・コートリル軟膏a(ジョンソン・エンド・ジョンソン)」や「ドルマイシン軟膏(ゼリア新薬)」などが該当します。
軽症~中等症の陥入爪の治し方:専門施設の矯正治
専門施設での矯正治療は、陥入爪の治療のなかでももっともよく行われる治療法です。
化膿や肉芽が見られる場合、自分で治そうとするのはよくありません。自分で無理に治そうとすると、症状が悪化したり再発したりするリスクが高いです。
軽症~中等症の陥入爪を治すなら、専門施設の矯正治療がおすすめです。
- 爪甲剥削法
- アクリル人工爪法
- マチワイヤー法
- 3TO-VHO法
- ガタ―法
- B/Sスパンゲ法
当院のような巻き爪専門院や一部のネイルサロン、整骨院などでも陥入爪治療を行っています。
ただし、化膿や出血が生じている場合の巻き爪・陥入爪の治療は「医療行為」になるため、医療機関でないと治療は受けられません。
陥入爪の治療を受けられるのは、おもに以下の診療科です。
- 皮膚科
- 形成外科
- 整形外科
- フットケア外来
爪甲剥削法
爪甲剥削法は、おもに厚い爪に有効な方法です。爪を薄く削って爪の柔軟性を回復し、爪を正しい方向に伸びるように促します。
爪甲剥削法だけで効果を得るのは難しいことも多いです。しかしマチワイヤー法やB/Sスパンゲ法などの矯正方法と併用すると高い効果があるでしょう。
また爪水虫を併発している場合は、爪を薄くすることで水虫用の薬を浸透しやすくなります。
アクリル人工爪法
人工爪はオシャレのためだけではなく、医療分野にも進出しています。
アクリル人工爪法とは、爪の先に医療用のアクリル樹脂で作った人工爪を付けて爪が皮膚に食い込むのを防ぐ方法です。
人工爪というと、ネイルサロンを想像する方も多いでしょう。一つ一つの爪に合わせて作るので、目立ちにくく見た目が美しいのが特徴です。
後から生えてくる爪は、アクリル人工爪によって矯正されるので、平らに伸びていきます。人工爪に合わせて爪が伸びるため、再発のリスクは低いです。
マチワイヤー法
マチワイヤー法は、形状記憶合金でできたワイヤーを爪の白い部分に通す矯正方法です。ワイヤーを通すのは爪の白い部分なので、施術中に痛みはありません。
【手順】
- 爪の白い部分に2か所穴を開ける
- ワイヤーを通す
- 医療用接着剤を使って固定する
施術当日から歩行や入浴など、日常生活が送れるのも特徴です。ただし施術するには爪の白い部分が必要なので、深爪の場合や爪が硬すぎる場合は施術できないこともあります。
3TO-VHO法
3TO-VHO法もマチワイヤー法と同じく、ワイヤーを使った矯正方法です。爪の形に合わせたワイヤーを爪の端に引っかけて専用のフックで引っかけます。
【手順】
- 専用のスチール鋼を爪の大きさに合わせて切り、弯曲させる
- 爪の左右に引っかけ専用のフックで巻き上げる
- 余分なワイヤーを切る
- 人工爪で固定する
ワイヤーを引っかけるのは爪の横側からなので、短い爪でも施術可能です。また爪の根元近くから矯正するため、マチワイヤー法よりも矯正力が強いというメリットもあります。
ガタ―法
ガタ―法は、患部の皮膚と爪の間にチューブを入れて、爪の食い込みを防ぐ方法です。深爪でも施術できますが、施術する際には強い痛みがあるので、爪周りや指の付け根に局所麻酔をする必要があります。
【手順】
- 局所麻酔をする
- 爪と皮膚の間にアクリルチューブを入れる
- コーティング剤を使ってチューブを固定する
ガタ―法は患部が細菌感染している場合、施術できません。
B/Sスパンゲ法
B/Sスパンゲ法は、形状記憶のプラスチックのプレートを爪に装着して爪を矯正する方法です。爪の厚さを大きさに幅広く対応できます。
装着してすぐに効果を感じられるのが、大きな特徴です。
【手順】
- 爪の表面を綺麗に整え、B/Sスパンゲの大きさを決める
- 爪にB/Sスパンゲを装着し、接着剤で固定する
B/Sスパンゲの矯正力は1ヶ月ほどで衰えるため、交換が必要です。
中等症~重症の陥入爪の治し方:外科的手術が必要
歩行が困難なほどの強い痛みがある場合は、外科的手術で根本的治療が必要な恐れがあります。
治療方法は、医師とよく相談するようにしましょう。陥入爪の手術は「形成外科」や「外科」で受けられます。
- フェノール法
- NaOH法
- 鬼塚法・児島法
- 爪縁切除
フェノール法
フェノール法は、皮膚に食い込んでいる爪を除去する手術です。爪を除去した後の爪母にフェノールを塗布して処置するため、除去した部分の爪は生えなくなります。
炎症で強い痛みのある状態でも施術でき、再発の恐れが少ないのが大きなメリットです。ただし、高血圧症や狭心症などの持病がある人の場合、フェノール法は行えない可能性があります。
NaOH法
NaOH法は、皮膚に食い込んでいる爪を除去し、水酸化ナトリウム(NaOH)で処置する手術です。
フェノール法と同じく爪母を焼いてしまうため再発はありませんが、焼いた部分の爪は生えてこなくなります。
NaOH法は、炎症を起こしている状態でも施術できますが、フェノール法に比べると施術を行っている施設が少ないです。
鬼塚法・児島法
鬼塚法は食い込んでいる爪を爪母だけでなく爪床や骨膜、側骨間靭帯も切除して、皮膚と爪を直接縫合する手術方法です。
鬼塚法を施術すれば陥入爪はほぼ完治しますが、術後しばらくは激痛をともない、2次感染を引き起こす危険もあります。
児島法は鬼塚法を改良した手術方法で、側骨間靭帯を残せるのが大きな特徴です。児島法も施術すれば、再発はほぼありません。
鬼塚法・児島法は日本で広く行われていた手術法ですが、フェノール法が普及している現在では、施術を行っているところは少なくなっているようです。
爪縁切除
爪縁切除は、皮膚に食い込んでいる部分の爪のみを切除する手術法です。皮膚を圧迫している爪を取り除くので、炎症や化膿から起こる痛みの症状を劇的に改善できます。
フェノール法など、ほかの手術法に比べると痛みが少ないので、麻酔なしで行われることも多いです。
また、爪縁切除で切除した部分の爪はまた生えてきます。再発のリスクがあり、処置後も近強い治療が必要です。
まとめ
陥入爪は、症状の段階ごとにできる治療方法が異なります。
軽症なら自分で治療できる場合もありますが、無理に自己流で処置するのは禁物です。治療方法が合ってなかったり間違ったやり方だったりすると、症状を悪化させる恐れがあります。
「歩くのがつらいほど痛い」「患部が化膿してしまっている」といったときには、皮膚科などの専門機関を受診しましょう。
専門家のアドバイスをもとに治療することが、陥入爪が完治する一番の近道です。